平成17年度実施した人材育成事業からの報告 〈1〉


       ~ 越境する農民交流 ~

 団体名

堆肥づくりに関する研修 ベンゲット州シナクバットにて

アジア農民交流センター(AFEC)

 事業名

東北タイにおける有機農業を軸とした
地域循環推進事業

 対象国

タイ

 事業概要

半世紀前、東北タイには豊かな森が広がっていた。人々はその森と共存し、生活に必要な資源を森から享受していた。しかしその後、外貨獲得を目的とした輸出指向型農業が森林の伐採を伴ってすすめられたのだ。そうした農業は業者主体のものとなり、村人たちの主体性を失わせることになった。農作物の価格は業者に牛耳られ、耕運機などの耐久消費財が増えたこと等も重なり、農民は莫大な借金を抱えることとなった。私たちは設立以来、東北タイと深い関わりを持ち、その成果の一つとして、いま日本の自治体でも注目されている山形県長井市で取り組まれている生ゴミ堆肥化事業「レインボープラン」が参考となり、東北タイ・カラシン県ブアカーオ市で生ゴミ堆肥化事業が始まった。人々の主体を取り戻す活動として周囲からも注目されている。現在、AFECでは、この事業の強化を目的に、主に人材育成の分野で支援している。

 研修内容

地域内循環を目的とした事業であるため、農業に関しても外部に資源を依存しがちな近代農業ではなく、地域の資源を有効に生かせる有機農業の推進が不可欠となる。タイと同じような自然条件を持ち、私たちのネットワークに関わる仲間がいるフィリピン・北ルソンの農村を訪問し、有機農業の技術や地産地消を目的とした市場づくりに関する交流、人材育成としてリーダーへのモラルサポートを行った。

 成果・研修参加者の反応など

訪問したフィリピン・北ルソンの地域は、マニラの台所と呼ばれ、そこで作られる野菜は、マニラに運ばれている。しかし、中国からの安価な野菜が入ってきていることなどの影響で、農作物の価格は下落を続けている。そうした状況下、訪問した農家たちは、タイで私たちが取り組んでいるように地産地消を目指したマーケティングづくりに励んでいる。そうした農家と交流することで、タイからのメンバーは、自分たちが取り組む外部に資源を依存しない、持続的な農業の活動の意義に確信を持ち、同じ志を持つ仲間として、今後も北ルソンの農家と繋がっていきたい、と感想を述べた。

 研修同行者から一言

東北タイでは、森林伐採や外貨獲得を目的とした換金作物栽培により農民の住む地域の資源は枯渇している。そしてその問題は、農民の莫大な借金という形で顕著化している。世界貿易機構(WTO)や自由貿易協定(FTA)が促進する農作物の自由貿易はさらにそうした流れに拍車をかけている。そうしたことは、いまアジア各国で起こっている。こうした状況下、私たちは、国境を越えて、人と人同士が直接交流する場を多く設けて、それぞれが持っている智恵の分かち合い、それぞれが抱えている問題をシェアする必要があると考えている。今回の北ルソン訪問でもお互いが有機農業や地産池消による地域循環づくりの意義を確認して刺激しあえたことは、両者にとって非常にいい経験となった。
こうした場を与えてくれた(社)国際農林業協力・交流協会に深く感謝いたします。

等高線農業Aフレームに関する交流

ベンゲット州シナクバットにて

有機農業に取り組むルフィーナさんとの交流

左端がピヤさん、右端がアムナートさん

ベンゲット州カパンガン郡タバオ区で