平成17年度実施した人材育成事業からの報告 〈2〉


        『生命の連鎖農法』、自己完結型生態系構築のシステムに迫る

 団体名

 眼下にラバウルの町が横たわる高台よりシンプソン湾を望む。
 
左奥に1994年噴火したダヴルヴィル火山が見える。

財団法人 オイスカ

 事業名

農村青年のための有機農業指導事業

 対象国

インドネシア共和国

 事業概要

無秩序な化成肥料の投入と農薬の散布が、土壌の疲弊と病害虫の蔓延、そして連作障害を招き、インドネシアの各地で自然環境汚染を引き起こすと共に、農作物の収量が落ち込み農家の生活を圧迫する原因となっている。本事業では、インドネシア全土の農村から青年達を西ジャワ州スカブミ県にある研修センターに受け入れて、有機農業研修を実施することで、環境に負荷をかけない持続的な生産活動としての農業の回復を目指すものである。畜産(主に養鶏)、蔬菜・果樹栽培、そして農産物加工から成る研修科目は、それぞれが有機的に結び付けられており、循環型の農業が学べるようになっている。 また、規則正しい寮生活を通して、規律や協調性、責任感、問題解決能力、創造性を涵養し、単なる技術面のみの研修とは一線を画した総合的人材育成を行っている。

 研修内容

ラバウル研修センターにおいて確立された『生命の連鎖農法』と呼ばれる環境保全を視野に入れた循環型有機畜産農法とそれを支えるエコテックと呼ばれる数々の有用技術について、実習を通して学ぶと同時に、その指導方法や普及概要、そして研修センターの運営方法についても視察・研修を行った。また、PNG政府農業機関を訪問して、同国の農業及び農村開発事情を学ぶことで、インドネシアにおける状況との比較を可能とする数々の情報を入手した。

 成果・研修参加者の反応など

ラバウル研修センターにおける循環型有機畜産農業のシステムが、徹底した廃棄物・副産物利用を行うことで、非常に自己完結性の高い生態系を作り出していることにまず感銘を受けたようであった。また、参加者は皆インドネシアにおける事業の現場担当者であるために、細かな技術についても実習を通して生きた知恵を学ぶことができたようで、インドネシアに戻って早速そうした技術を導入しているのが見受けられる。 ラバウル研修センターが自己財源のみでの運営を達成していることにも刺激を受けたようで、インドネシア研修センターの財政的自立を目指す上で何が可能かについても数多くのヒントを得た模様である。

 研修同行者から一言

取り組み始めてまだ歴史の浅いインドネシアの循環型有機畜産農業よりも、ラバウル研修センターのそれがより完成したシステムを持っていることを参加者が実感できたことは、我々の事業をより具体的・客観的に評価し、抱えている様々な課題に対する解決の糸口を掴むことが出来たという点において、大きな収穫があったと思う。また、インドネシアの気候的条件とほぼ同じ隣国で、しかも参加者たちと同じ日本で研修を受けたオイスカ研修生OBたちの手により同研修センターが運営されているという事実は、ともすればインドネシアの風土にあった有機農法を確立するという難問に日々頭を悩ませ、時には諦めがちな参加者たちの大きな励みと目標となるに違いない。今後の参加者たちのフォローが同行者としての務めだと考えている。

稲作栽培コース「ALPHA」
明日の田植えに備えて畑苗の苗とりをする研修生達

実習@―自然農薬作り
発酵抽出液作り。材料は身近にあるものばかり